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【SS[R-15]】仮題「共和国」(ディストピア)

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【昔書いたSSシリーズ(2016)】

※近未来とファンタジーが混在するディストピアな世界で、市民権みたいなのを獲得した貧しい青年と、処刑寸前だったレジスタンスの少女の物語。すっごい曖昧な記憶だけど、確か書こうと思ったきっかけが「終わりのセラフ」だった希ガス。未完です。ちょいグロ・残酷描写に注意!(本文-約6,000文字)

 

 以下、原文まま。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――~下民居住区~

TV「...当選番号、702番っ!!」

TV「以上が今回の当選者でした~♪おめでとうございまーす!」

青年「…」

 スラムの通りに設置されたブラウン管TVの前で唖然とする青年。
 彼の手には、小さな紙切れが握りしめられている。

青年「やった…?」

青年「やったああああああああああ!!!」

 両腕を天に掲げ、雄叫びを上げる青年。
 周囲の民衆からは、冷たい視線が浴びせられる。

TV「えー、なお、ご存じかとは思いますが、上階層居住区に移住する権利が与えられるのは、当選したご本人と、登録制従者の二名のみです」

TV「これらの情報は、中央当局にて管理されており、例外は一切認められません」

TV「仮に、当選者からの当選券略奪や、虚偽の申告による不法侵入を試みた者には、特別刑法第4条が適用され、厳罰が下されます」

 先ほどの天真爛漫な女性アナウンサーとは打って変わって、知的な風貌のアナウンサーが淡々と解説する。

TV「さらに、当選者の方の移住先となる中民居住区では、登録制従者に課される義務と権利に関する制約が下民居住区のそれとは大幅に異なるため…」

TV「ご心配な従者の方は、移住前に当選者様と、主従契約について今一度よくご相談なさることをお勧めいたします」

TV「なお、この権利は、憲法にて保証されています。ご安心ください」

青年(従者か…。まぁ、僕には関係のないことだ…)

青年(さあ…行こう!)

 光化学スモッグで淀んだ太陽に手を伸ばす青年。

青年「この空の向こうへ…」

 

 

共和歴38年。

   堕落した国勢の再統合のため、共和政府は大改革を実行。

 多くの命が失われた。

  そして命を代償に冷徹な強国が誕生した。

共和歴44年。

 共和政府は領土を同心円状の城壁で分割し、国民等級ごとに居住区を分別した。

                                「マントル計画」  
共和歴―45ネン。

 共和政府が奴隷制度を復活。

「登録制従者」と呼ばれる政府公認のドレイたちは、家畜以下の存在ダ。
         

          そして共和歴・・・56年…

 

共和歴 56年 8月 10日
共和国-下民居住区-中央北広場

 パァーン...パァン、ガガガー...

 広場に鳴り響く銃声。その騒音は、装甲兵員輸送車の内部にまで届いて反響する。
 
青年「うぅ…」

下民A「おい…本当に大丈夫なんだろうな!?」

下民B「憲兵隊はまだ制圧できないのか!?」

憲兵「落ち着きたまえ!現在、諸君らの身の安全は共和国国家憲兵隊によって保証されているのだ!」

憲兵「もうじき我々が反逆者共を制圧する。作戦に支障を来さぬよう、諸君らには、何卒、静粛に願いたい」

 ―ドォン!ドォン!ドォン!ドォンッ!

 下民たちの悲鳴やざわめき声。装甲車が装備する機関砲の発砲音と衝撃が車内に伝わってくる度に騒ぎが起こる。

青年「うわわっ・・・!?」

下民A「なんだ!?まさか撃たれたのか!?」

下民Aの従者「装甲車の大砲ですよ、マスター…」

下民A「う、うるせえ!そんなことたぁ、わかってらい!!」

下民A「あんまり生意気な口利くと、広場に捨ててくぞ!?」

下民Aの従者「す、すみませんでした…どうかお許しを…」

憲兵「静粛に!」

青年(登録制従者…か…)

 理不尽な扱いを受ける登録制従者に、もの悲しさを覚える青年。

車長「スキャン・・・クリア?」

砲手「クリア」

 下民たちの座席よりも前方にある乗員席で、乗員の憲兵らが短い単語を交わす。

車長「安全確保ー!後部ハッチ開け」

憲兵「了解。後部ハッチ開放する」

下民A「お、終わったのか…?」

憲兵「ああ。今からハッチを開けるが、降車の指示があるまで着席を願う」

 ―ガチャンッ…

 装甲車の後部ハッチが開放される。一瞬、車内の人間の視界がホワイトアウトするが、すぐに車外の景色が目に映る。

 車外で、ヘルメットを被り、小銃を手にした重装備の憲兵が手招きする。

憲兵「民間人は降車!ハッチに近い席から順番だ!」

 車内の憲兵の指示で装甲車から当選下民たちが次々と降車する。

青年「…?」

青年「うっ!?」

 凄惨な光景。

 広場のあちこちに散乱する死体と血痕。

憲兵「気にするな。門に向かって歩け」

 憲兵の射撃で撃ち抜かれたであろう死体もあれば、装甲車の機関砲で粉砕されたであろう肉塊も転がっている。   

反乱民兵A「ぐあぁぁぁ…!あああああああああああ!!!」

 中にはまだ息のある者もおり、酷い傷の激痛に苦しみながら地面をのたうち回っている者もいれば、戦意喪失してただただ座り込む者もいる。

戦闘憲兵A「…やれ」

戦闘憲兵B「…」

 ダァンッ!!

 息のある者に淡々と止めを刺す憲兵隊。

反乱民兵B「ま、待て…!投降するから、せめて裁判をっ!」

 ダァンッ!!

青年(酷い…。あれが反逆者の末路か…)

 青年は、憲兵隊の蛮行に恐怖を覚えると同時に、反逆者に対する非人道的な扱いに疑念を抱く。

青年「あっ…」

 青年がハッとする。

 彼の視線の先には、彼の年と同じくらいの少女が座り込んでおり、恨めしそうな表情で地面を睨み付けている。

戦闘憲兵A「…女か」

 覆面をした憲兵が少女を見下ろす。

戦闘憲兵B「まだガキだがな。殺すには惜しいか?」

 覆面で、唯一露出している"目元"に笑みを浮かべる憲兵。

戦闘憲兵A「フン…お前ならどう楽しむ」

戦闘憲兵B「…」

 小銃を構える憲兵。

 ダァンッ!!

少女「ヒィッ―――――!?」

少女「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

青年「ハッ!?」

 硬直した後、悲鳴を上げて脚を手で押さえる少女。

 少女の脚から鮮血がじわりと流れ出る。

戦闘憲兵A「悪趣味だな…」

戦闘憲兵B「まだまだ、これから…」

戦闘憲兵B「だろッ!?」

少女「ぎゃああああああああっ!?いやあああああああああああ!!!」

 銃床で少女の傷口を抉る憲兵。悲愴な表情を浮かべた少女が大粒の涙を流しながら手足をじたばたさせ、首を振る。

青年「や、やめてくださいよ!!!」

憲兵「あっ!?待て、君ッ!!」

 たまらず、少女のところへ駆け寄る青年。

戦闘憲兵B「ああ?なんだお前」

青年「いくらなんでも酷すぎます・・・こんなの・・・!」

戦闘憲兵B「ああ・・・これは失敬」

 無愛想にそう言って、素早く小銃を構える憲兵。

青年「ッ!?」
少女「…!?」

 咄嗟に少女を庇う青年。

戦闘憲兵A「待てッ!!」

 ダァンッ!!

戦闘憲兵B「ッ!!?」

青年「…ッ」

戦闘憲兵A「ハァ…ハァ…」

戦闘憲兵B「うぉ…」

 発砲した憲兵の小銃を、もう一人の憲兵が掴んで押しのけたため、放たれた弾丸は青年に命中せず、地面に横たわる少女の顔面から2cmほど離れたところに着弾した。

戦闘憲兵A「貴様ァ!!!何を考えている!!?」

 憲兵が覆面の下で怒りの表情を浮かべ、青年を怒鳴りつける。

戦闘憲兵A「もう少しで警護対象の当選下民を誤射するところだったんだぞ!!!我々の顔に泥を塗るつもりかァァ!!!」

青年「相手が反逆者なら、何をしてもいいっていうんですか!?この子だって、僕やあなたたちと同じ人間でしょう!?」

 一瞬の静寂の後、広場に憲兵たちの笑い声が溢れる。

戦闘憲兵B「お前っ!お前とそいつが俺たちと同じだって?笑わせるんじゃねぇよ!」

戦闘憲兵A「くくっ…。お前は…まぁ、ともかく…その薄汚い小娘は、慈悲深き我らが共和国憲法の庇護からも見放された存在…」

戦闘憲兵A「いわば、家畜以下も同然の存在なのだ!」

戦闘憲兵B「それを俺たちと同じ人間だと?悪い冗談はよしてくれよ、坊や!」

青年「くっ…」

青年「…」

 怒りに震える青年。彼がふと向けた視線の先では、痛みと屈辱への苦悶の表情を浮かべた少女が、涙を流しながら震えている。

少女「…あんたの」

青年「!」

少女「あんたのせいで…こんな屈辱ッ…!」

少女「なんで死なせてくれなかったの…なんでっ…!」

青年「…!」

 青年の心がまるで凍り付くように痛む。

 今まで恥を忍ばず日々生き長らえることに必死だった自分とは対照的に、恥を嫌って死を望む少女。

 目の前の彼女は自分と同じ人間のはずなのに、こうも違う。

 好みや性格の違いではない。なぜ僕の目の前にいる彼女は死を望むのか。

 なぜ今この場にいる憲兵たちは命を弄ぶのか。

  なぜ、世界は…こうも冷え切っているのか…。 

 ――ゴツンッ!

青年「痛ッ!?」

下民A「この反逆者め!」

下民A「お前もそのメスガキと同じ反逆者だ!このっ!」

 先ほどまで装甲車の中で騒いでいた当選下民が、青年にむかって道ばたの石を投げつける。

青年「っ…」

憲兵「やめたまえ!彼も君と同じ当選下民だぞ!」

下民Aの従者「す、すみません憲兵さん…」

 下民の従者は憲兵に平謝りする。

下民Aの従者「マスター…やめましょうよ…!」

青年「…!」

 その光景を目にした青年。

 彼の脳裏に、ひとつの思惑が走る。

憲兵A「さて…もういいだろう。茶番はたくさんだ」

憲兵A「やれ」

憲兵B「了解」

憲兵B「ほら、どけ!」

 憲兵が青年の肩を掴み、押しのけようとする。

青年「この子を…」

 青年が憲兵の手を力強く掴み返す。

憲兵B「あ?」

青年「この子を、僕の…」


青年「従者として、登録できませんか」

 

 

 

 

 

再び静寂に包まれる広場。

しばらく経って、その静寂を破ったのは、悲痛な叫び声だった。

少女「お願い!!殺して!!!」

青年「!?」

少女「はやく!!!早く殺して!!!」

少女「殺して!!!はやく殺して!!!」

少女「ねぇ、殺して!?殺せよ!!」

少女「殺せ!殺せ殺せ!!!!殺せえええええええええええ!!!!!!!」

 ――パァンッ!!

 広場に響く乾いた銃声。

少女「っ…」

少女「…」

少女「…?」

憲兵「…」

 虚空に向けられた憲兵の拳銃から一筋の白煙が立ち上る。 

憲兵「…共和国憲法では、市民階級が自身よりも下の者、かつ、共和国社会に、単身では貢献する可能性の低い者を従者とすることが認められている」

青年「…つまり、それは反逆者でも当てはまるんですね?」

憲兵「黙れ。これの例外とする者のひとつに"当局によって身柄を確保された状態の者"」

憲兵「…が、ある」

青年「っ…!?」

憲兵「つまり、その娘は君の従者にすることができない」

少女「…」

 痛みで多少歪んではいるものの、安堵の表情を浮かべる少女。

武装憲兵A「…おい」

武装憲兵B「…」

 青年を突き飛ばし、少女に向けて小銃を構える憲兵。

青年「やめろっ!」

少佐「ターンマ!」

少佐「ターンマ、タンマ♪タン、タンマ~♪」

 気の抜けた言葉が聞こえてきた方向に訝しげな表情で視線を向ける憲兵たち。

 しかし次の瞬間、憲兵隊員ら全員が姿勢を正し、敬礼する。

憲兵「少佐殿ッ!」

少佐「あはは~♪なんだか面白そうなことになってるじゃない?」

 憲兵隊の通常制服に将校用マントを纏った男が現れる。

憲兵「ハッ!報告いたします!作戦中に奇襲を仕掛けてきた反政府勢力を殲滅!」

憲兵「死者8名!拘束者1名!こちら側に被害はありません!」

少佐「お~♪上等ぉ~、上等ぉ~。流石は国家憲兵隊随一のエリート小隊だねぇ」

少佐「まぁ、僕の部隊なんだけど!アハハハッ!」

 拍手しながらはにかんだ笑みを浮かべる憲兵隊将校。
 
憲兵「…続けて報告いたしますと、その拘束者1名ですが…」

少佐「はいはい?この子ね?」

少佐「でー、そっちの子がこの子を自分の登録制従者にしたいって言ってるんだよねぇ?」

憲兵「ハッ…。おっしゃる通りです…」

少佐「いいじゃなぁ~い♪させてあげなよ~?」

青年「!?」
少女「!?」

 将校の、突拍子もない提案に、その場に居合わせた誰もが動揺を隠しきれない。

憲兵「お、恐れながら申し上げますが少佐…」

憲兵「我が共和国憲法では、当局が拘束中の者を従者とすることは認められておりません…」

少佐「あー、じゃあ釈放、釈放。この子は今から自由の身ってことで」

憲兵「少佐殿ッ!」

少佐「もぉ~。冗談に決まってるじゃない…」

 つまらなさそうにため息をつく将校。

少佐「共和国政府の名の下に…薄汚い反逆者を許すわけないでしょ…?」

少佐「これはひとつの刑罰だよ…この家畜以下の存在を、本当の意味で家畜以下に貶めるという…」

少佐「ね?」

少女「ぅっ…ぅ…!?」

 先ほどまでの間の抜けた雰囲気とはほど遠い、邪悪な笑みを浮かべ、少女のあごを指先で持ち上げる将校。

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔の少女は、屈辱と怒りに加え、今自分の目の前にいる将校から漂う底知れぬ邪悪さへの恐怖から、震えが止まらない。

少佐「あはぁ…酷い顔…。せっかくかわいいのに、台無しだね…?」

 将校があごから手を離すと、少女は力なく地面に崩れ落ちる。

青年(今のはどういう意味だ…?本当の意味で家畜以下…)

少佐「でさぁー?さっきから気になってたんだけど、この子の脚撃ったのだぁれ~?」

 不機嫌そうな声色で周囲をキョロキョロと見回す将校。

武装憲兵A「お、おい…」

武装憲兵B「じ、自分であります、少佐殿…」

少佐「ああ…君ね…」

 パァンッ!!

少佐「趣味わっるぅ~…。うちの隊には君みたいな人、いりませーん」

 銃弾を眉間に受け、倒れる憲兵。その光景に他の憲兵たちが戦慄する。

少佐「僕の小隊では、品のないお遊びは謹んでほしいって、いつも言ってるよねぇ?」

少佐「わかったら、誰かその子を手当してあげて。あと、目の前に中民居住区の入り口があるんだから、さっさと任務の方も終わらせちゃいなよ」

憲兵「ハ、ハッ!全員聞こえたな!?衛生兵っ!そいつの手当を!」

憲兵「残りは当選者の誘導急げ!」

 憲兵らが、まるでパレードのようなキレのある動作で一斉に動き出す。

少佐「ふふふ…」

青年「…!」

 将校が青年に向き直る。

少佐「中民区画での居住権獲得おめでとう…君はなかなか見込みがあるんじゃないかなぁ…」

青年「…どういう意味ですか」

少佐「ま…ただの独り言…かなぁ…?」

少佐「その子…従者にしても、大切にしてあげなよぉ?」

青年「…はい」

少佐「んふっ♪じゃあね~」

 マントを翻し、踵を返して去ろうとする将校。

青年「あの!」

少佐「…ん?」

 青年の一声で、振り返る将校。

青年「何はともあれ…ありがとうございます…」

少佐「あははっ♪憲兵として当然のことをしたまでさ。本当にね」

少佐「礼には及ばないけど…僕、そういうのは好きだよ…?」

少佐「チャオ♪」

 手を振りながら去って行く将校。その後ろ姿は、やがて塵の舞うスラム街へと消えていった。

 

~中民居住区入場管理局~

 居住区入り口のゲートを抜けると、そこは地面がゴミだらけの下民居住区の雰囲気とは打って変わり、清潔感溢れるタイル張りのホールが広がっていた。

 ホールにはいくつかのカウンターがあり、カウンターでは憲兵と似た制服を纏う審査官たちが当選者たちの最終審査と手続きを行っている。

審査官「ふむ…」

 手元の端末と、ガラスのスクリーン越しに審査対象者を見比べる審査官。

審査官「よし、通りなさい」

下民A「へへっ、どうもどうも!」

下民Aの従者「ありがとうございました」

審査官「次!」

青年「はい…」

少女「…」

 手当を受けた際の麻酔で眠ったままの少女をおぶった青年が、審査官の前に出る。

審査官「ラクト・コーレン…17歳、害虫/害獣駆除業、当選番号702」

審査官「間違いないね?」

ラクト「はい」

審査官「それで…従者…トウカ・レジスト…16歳」

審査官「…元反政府…勢力?」

審査官「現…受刑者!?」

審査官「かつ…ラクト・コーレンの従者…」

 審査官が手元の端末を眉間に皺を寄せながら凝視する。

 しばらくすると、審査官が顔を上げ、青年を鋭い眼光で睨み付けたまま、受話器とってを耳に当てる。

審査官「こちら3番窓口。国家憲兵隊本部につないでくれ」

 

(了)