【昔書いたSSシリーズ(2013)】
※洋ゲーのシナリオをイメージしながら書こうとしていた作品のようです。世界観としては、Metro2033とか、S.T.A.L.K.E.R.とか、Falloutとか、そういうゲームに近い感じ? 未完です。(本文-約5,000文字)
あらすじ
地上が汚染され、荒廃した近未来の世界。人類はもはや地上に住むことを許されず、崩壊前に発達したリニアモーター地下鉄道網のトンネルを新たな都とした。
トーマス・B・モルダーは、メトロセントラル駅に所在する警察本部の警察官だ。普段は代替コーヒーを片手に、咥えタバコで地下街をパトロールするのが主な仕事のトーマスだが、人手不足の煽りを受け、危険なミュータントと対峙する任務を命ぜられていしまう。
以下、原文まま。
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ジジジッ…ジジジジッ…パッ...パッ...
荒廃した街。枯れた花壇に佇む古い街灯が点滅する。
見た目は味のあるガス灯だが、その中身は月面が反射する微小な太陽光を増幅してエネルギーとするハイテク蛍光管だ。
古きものを愛する傾向のある人間たちに幾度も改修されて、このように今まで生きながらえてきたが、すでに中の回路をやられてしまって余命幾ばくもない。
私は何百年もの間、この花壇に住んでいて、街の人々の足元を照らしてきた。私の親愛なる隣人、隣の花壇に住む彼はすでに永い眠りについている。
この街の歴史はとても古い。この地に人々が住み着いたのは遡ること3000年以上も前のことである。
その時点から今日まで、幾度も天災に遭ったり、戦火に巻き込まれたりしているが、驚くことに一度たりとも街の建物が大きな被害を被ったことはないそうだ。
そのため、この老いぼれ街灯のように歴史を顧みることのできるパーツが街中で見られるのだろう。
しかし、つい最近・・・今から50年ほど前の災いは違った。
災いは街こそ破壊せずとも、多くの人々の命を奪い去り、人々を地上に出てこられなくした。
もし今、誰かが地上に出て来ようものなら、災いはその人間を見逃してはくれないだろう。
人々は災いを恐れ、生活のほとんどを地上から地下へと移した。
この街の地下にはリニアモーターで運行する高速地下鉄道網が東西南北へと張り巡らされているのだ。
機能こそしていなくとも、そこは人々にとって格好の隠れ家・・・いや、新たな都となった。
さて・・・人々はまた地上に戻ってくるだろうか・・・そうしたら、この老いぼれを起こしてはくれるのだろうか・・・
ジジジッ…ジジジッ…ジッ…フッ...ブツン…
~ マグナ・ルイナ高速地下鉄道(通称-メトロ・ルイナ) メトロセントラル駅 歓楽街 ~
ガヤガヤ...
男「・・・」スタ...スタ...
男「・・・」キョロ...キョロ...
飲んだくれ「そうしたらアイツ、こう言うんだ。”えっ!?地下鉄は空を飛ばないだろ!?”だとよwwww」
飲んだくれ「ハッハッハwwwwwあいつは通関局よりコメディアンの方が仕事に向いてたなwwww」
男「・・・」スタ...スタ...
男「・・・」キョロ...キョロ...
おっさん「金目のものはもうない・・・本当だ・・・」ボロッ...
少年1「ハッハwww嘘はいけねぇよおっさんww」ガシッ!
少年2「たったの20アウルしか持ってないセントラーがいるかよwwwなぁ!!!」ドスッ!
おっさん「うぐっ・・・!」
男「・・・」
男「おい、君たち?」
少年1「あぁ?」
少年2「なんだァ?何か用でもあんのか?」
男「知っているね?恐喝ゆすり、他人への暴力は犯罪だ。今すぐやめてママのところに帰るように」
おっさん「うぅ・・・」ボロッ...
少年2「ハッwwなんだコイツwww」
少年1「よぉ、紳士気取りか?タフガイww痛い目みたくなきゃ、さっさと消え失せろ」ナカユビ
男「はぁ・・・見逃してあげようと言っているんだ。僕は平和に夜勤を終えたいだけなんだが・・・」サッ...
【M.R.P.D.】(MagnaRuinaPoliceDepartment)
少年2「・・・!」ビクッ...
男「どうだい?このバッジ、今朝磨いたんだけどイカしてるかな?」ニッ
少年1「クソッ・・・!サツかよ・・・行こうぜ・・・」
少年2「あ・・・あぁ・・・」
男「ふぅ・・・大丈夫です?立てますか?」
おっさん「あぁ・・・助かったよ、おまわりさん・・・げほっ・・・」
男「未来ある少年たちを許してやってくれますかな?あと、署の書類節約にもご協力して頂ければ幸いです」ニコ
おっさん「はっは・・・俺も昔なら、あんなクソガキどもに絡まれることはなかったんだがな・・・今じゃアル中のせいでこのザマだ・・・」
男「ふむ・・・”.M.R.G.M.”・・・その首にある跡は旧軍の機械化海兵隊に所属していたときの名残ですか?」
(MagnaRuinaGearedMarines)
おっさん「ああ・・・バーコードタグの担当軍医がしくじりやがったもんでな・・・レーザーの出力を二目盛りも間違えられた」
おっさん「・・・ところであんた、若いのに旧軍の部隊名とタグのことなんてよく知っているな・・・何者だ?」
男「好きなんです。マグナルイナが地上で栄えていた頃の・・・あぁ・・・平たく言えば、旧軍オタクかな」ニッ
おっさん「なるほどな・・・だが、ほどほどにしないと、内務局から地上至高派のスパイとして目を付けられるぞ?」
男「心配ご無用。すでに職場では変わり者扱いされているもんでね」
おっさん「ふんww確かに変わっているとは思うな・・・」
男「ええ。家まで送りましょうか?」
おっさん「いや、結構だ・・・世話になったな・・・頑張れよ、おまわりさん」
男「アイアイサー。お気をつけて」ケイレイ
おっさん「フンッ・・・」ニヤッ...
~ マグナ・ルイナ警察本部(旧地下鉄道警察詰所) ~
男「トーマス・B・モルダー巡査部長!ただいま帰還しました!」ケイレイ
受付男「ハッハwwご苦労であった、巡査部長!次の任務に備えて休息をとるように!」ケイレイ
男「イェス・サーww」ニヤッ...
受付男「そうだ、トム?警部がお前のことを探してたぞ。何か用があるみたいだ」
トム「本当に?警部はオフィスにいるかな?」
受付男「多分な」
トム「わかった、行ってみるよ。ありがとう」
受付男「礼には及ばん」
大男「・・・」スタスタ...
トム「!」
大男「・・・」スタスタ...
トム「・・・」
トム(見たことのない男だ・・・来客か・・・?あのガタイの良さと眼つきからして、ただ者ではなさそうだが・・・)
警部「ああ、モルダー。丁度君を探していたんだ」
トム「警部。ジョーから聞きました。今、あなたのオフィスへ行こうとしていたところです」
警部「そうか。では、立ち話もなんだから私のオフィスへ行こう。届いたばかりの紅茶をご馳走するよ」
トム「いいですね。・・・あぁ、警部?」
警部「なんだね?」
トム「今の男は?署長室から出て来たようですが、来客ですか?」
警部「あれか?なんでも海外の政府機関のエージェントだそうだ。うちに何の用かは知らんが、ご苦労なことだな」
~ リチャードソン警部のオフィス ~
警部「さて・・・まずは、かけてくれ」
トム「ええ。長くなるようなお話で?」ガタ...
警部「少しな。都合が悪いか?」
トム「いえ、問題ありません」
警部「うむ・・・では、手始めにこの資料に目を通してくれ」トントンッ...バサッ...
トム「これは・・・メトロセントラルの点検用区画の見取り図ですか・・・」パラ...
警部「そうだ。よくわかったな」
トム「ここは確か、何年か前に小型のミュータントが出たので、入り口が溶接されましたね」
警部「ああ。2年ほど封鎖状態だが、今回封鎖が解かれることになった」
トム「なぜです?」
警部「最近、メトロルイナ全域で電力が不足していることについては知っているな?」
トム「ええ」
警部「この点検用区画には非常用の小型核ジェネレーターが設置されている。出力はこれ一基で300MWほどだそうだ」
トム「{口笛}・・・地上の火力発電所並ですね」
警部「そうなのか?まぁ、ともかく、このジェネレーターを作動させれば、ディーゼル発電機100台分の電力を確保することができる」
トム「ふむ・・・しかし、まさか僕一人に電源を入れに行けとおっしゃるつもりではないでしょう?」
警部「ハハッwwまさか。君には、機動隊アサルトチームの補佐として技術者の護衛をしてもらいたいのだ。本部からの指示でな」カチャカチャ...
トム「警察が対ミュータントの護衛に・・・どちらかといえば、軍の仕事に思えますが」
警部「軍は侵入してきたミュータントの相手で手一杯なのだろう。だから我々も便利屋になる必要が出てきたのだ」コポポポポ...
トム「なるほど・・・人手不足はみんなの問題になってきたようだ・・・」パラ...
警部「うちの機動隊員もミュータント絡みの事案で今年に入ってからすでに3人殉職しているしな。砂糖は入れるか?」
トム「ええ、二つお願いします・・・」パラ...
警部「さあ、召し上がれ。アジアから取り寄せた、20gあたり1200アウルもする高級品だぞ?」カチャン...
トム「ほう、それは楽しみですね・・・いただきます・・・」スゥ...ゴク...
トム「ふむ・・・素晴らしい・・・♪」ホッコリ...
警部「ハッハww君もようやく違いのわかる男になってきたようだな・・・」スンスン...
トム「ええ、警部殿のおかげであります・・・」ゴク...
警部「では、飲みながら話の続きだ。君の任務は技術者2名の直接護衛、機動隊は主にミュータントの掃討と区画の安全確保を行う」ゴク...
トム「つまり、アサルトチームが撃ちもらしたミュータントの相手をするわけですか」
警部「簡単に言えばそんなところだ。現場ではチームリーダーのウォーレン巡査部長の指示に従ってくれ」
トム「ウォーレンか・・・彼のチームなら僕の仕事は少なくて済みそうだ」
警部「手は抜くんじゃないぞ。メトロルイナ全住民の将来が懸かっているといっても過言ではない任務だ。あと、君と上司である私の俸給もな?」
トム「それは大変だ。警部に美味しい紅茶をご馳走して頂けなくなる」カチャ...
警部「そういうことだ。仕事は明朝の8時に開始、それまでに点検用区画の入り口前に集合すること。頼んだぞ」
トム「了解しました、警部殿」
警部「さて・・・私から話しておくことはもうない。一服したら、下層階の装備課に行っておくように。明日の装備を受領するんだ」
トム「できれば、軍用のパワードスーツと対ミュータント用の大型火器を用意してほしいところですが・・・」
警部「君に使いこなせるのか?私は無理だぞ」
トム「恐らく、僕にも無理でしょう」ニッ
警部「トーマス、無駄口を叩いている暇があったら、さっさと紅茶を飲んで、装備課からレクチャーを受けるんだ」
トム「お言葉を返すようですが、本官は紅茶はゆったりとリラックスしながら嗜む物だと"上司"から指導を受けました」キリッ
警部「ああ・・・そうだな?じゃあ、明日の午後のティータイムには君を呼ぼう。中世の王族についてじっくりと語らおうじゃないか。ゆったり、リラックスして?」
トム「あぁ・・・すみません・・・やはりあなたには逆らうべきではなかった・・・」
警部「わかればよろしい。さあ、下でレクチャーを済ませて今日はもう休め。万全に備えるんだ」
トム「はい、警部。ご馳走様でした。では、失礼します・・・」
~ 警察署 下層階 射撃練習場・武器庫 ~
男「{口笛}~♪」ガチャガチャ...ジャキンッ!
トム「やあ、アダム。ご機嫌だね」ニッ
アダム「よぉ、トミー!待ってたぜ」ニコッ
トム「おや?その”得物”は珍しいね・・・」
アダム「ああ、これか?へへっ、スゲェだろ。旧式の軍用対戦車ライフルだ」ジャキッ!
トム「50口径か・・・どこでそんなものを・・・」
アダム「機動隊の連中がチンピラどものアジトから押収したんだ。軍に返そうとしたが、そんな骨董品はいらねぇからぶち壊せだとさ」
トム「で、君はそれを無視して修理してしまったわけか・・・」
アダム「ああ!ライフリングは磨耗してツルツル、機関部も錆でクソみたいな状態だったが、寄せ集めの部品でどうにか撃てる状態にはできたよ」
トム「流石だね・・・触ってみてもいいかい?」
アダム「もちろんだとも。お前みたいなオタクにはたまんねぇだろ?」ゴトンッ!
トム「おぉ・・・これは・・・なるほど・・・」スッ...カチャカチャ...
アダム「調べてみたところ、どうやら現行の弾薬にも互換性があるらしい。軍のパワードギアの腕部ガトリング砲と同じ弾薬が使える」
トム「へぇ・・・この倉庫にはないのかい?」スチャッ...
アダム「トミー、仕入れ担当は俺じゃない。警察に軍用パワードギアの弾薬が配備されてると思うか?」
トム「いや、もしかしたらと思ってね・・・残念だ」ゴトンッ...
アダム「ああ。残念ながら今のところ、こいつはただのオブジェだよ」シャリーン...
アダム「さて、明日の作戦でお前が使う装備が用意してある。受け取れ」ゴソッ...
トム「ふむ・・・旧式のSWATスーツ一式・・・それとこれまた年代もののロッキングローラー式10mmサブマシンガン。実に頼もしいね」ニコッ
アダム「そう毒づくなよトミー。確かに両方とも年季は入ってるが、ちゃんと整備してあるから信頼性は抜群さ」
トム「ああ、確かに抜群さ。撃てるし、着れるし・・・?」ゴソゴソ...
アダム「新式の装備は全部機動隊の連中に回っているんだ。悪いがその予備の装備で我慢してもらうしかねぇ」
(了)